ヴァニタス
「えっ?」

私は驚いて聞き返した。

今、彼女の口から“ムトウ”って言う言葉が出てきたような…?

彼女が言っている“ムトウ”って、私が知っている武藤さん?

「“ムトウ”、ですか?」

私は彼女に聞いた。

「はい、“ムトウ”です」

彼女が答えた。

いや、待って…。

武藤って言う名字は、いっぱいあるはずだ。

彼女が言っている“ムトウ”が、武藤さんとは限らない。

「何か知っていますか?」

私が黙っていることを不思議に思ったのか、彼女が聞いてきた。

「い、いえ…」

とっさに、私は首を横に振って答えた。
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