ヴァニタス
そこまで思って、私は気づいた。

私…少し前までは、自殺をしようと思っていた。

だけど、今はどうなのだろう?

食中毒にならないように気をつけようと、しっかりと心がけている。

これが自殺をする時の私だったら、そんなことを気にしなかったかも知れない。

「あの時」

そう話を切り出した武藤さんに、
「はい?」

私は聞き返した。

武藤さんは私に視線を向けると、
「俺の家のテラスから果南ちゃんが飛び降りようとしていた崖が見えたでしょう?」
と、言った。

「あ、そう言えば…」

武藤さんはそこから飛び降りようとした私を見て、自殺を止めてくれたんだっけな。

今思い出して見ると、おかしななれ初めだ。
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