ヴァニタス
「赤ちゃんが生まれたら、また油絵を描くから」

そう言った武藤さんに、
「楽しみにしています」

私は答えた。

私はお腹に手を当てると、
「お父さんが油絵を描いているところを見せてくれるんですって」
と、我が子に話しかけた。

話しかけた私に、
「声聞こえるの?」

武藤さんが不思議そうに首を傾げた。

「私たちの声がこの子に聞こえるかどうかはわからないんですけど、何だか答えてくれるような気がするんです」

私は笑いながら武藤さんの質問に答えた。

「答えてくれるような気がするって…」

武藤さんは苦笑いをした後、床のうえにスケッチブックと鉛筆を置いた。
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