ヴァニタス
怖くない…。

死ぬことは、怖くない…。

怖くない…。

怖くない…。

怖くない…。

海が近づいてくる。

そこから目をそらすように、私は目を閉じた。

後、少しだ。

そう思った時、
「――ちょっと待て!」

突然聞こえた大きな声に、私は閉じていた目を開けた。

首を振って声の主を探している私に、
「何してるんだ!?」

男の人がこちらに向かって近づいてきた。

「――こないで!」

私は男の人に向かって叫んだ。
< 4 / 350 >

この作品をシェア

pagetop