スイートナイト
「し、静希ちゃん」

静香が名前を呼んで、私の耳元に唇を近づけた。

「どうして旧姓の方を名乗ったのよ?

“澤井”は旧姓でしょ?」

困ったように言った静香に、私はあっと気づいた。

確かに、私がさっき巽くんに名乗ったのは本名の“水谷静希”ではなく、旧姓の“澤井静希”だった。

「どうかしましたか?」

私と静香に、巽くんは不思議そうに首を傾げた。

「ううん、何でもない。

ごめんね、突然内緒話を始めちゃって」

静香は私の耳元から離れると、笑いながら謝った。

「いや、別にいいっすよ。

で、何の話をしていたんですか?」

巽くんはソファーに腰を下ろした。
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