スイートナイト
「俺、静希を旦那の元に返したくない」

巽くんはそう言った後、今度は私の唇に自分の唇を重ねた。

その唇は離れる。

「――私も、あの人の元に帰りたくない」

私は言った。

「できることなら、あなたのそばにいたい」

「静希!」

巽くんが私を強く抱きしめた。

夫の存在は、もう忘れた。

罪悪感もなければ、抵抗も、後ろめたさもなかった。

巽くんさえいれば、それでいい。

巽くんさえいれば、充分だ。
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