夜明けのコーヒーには 早すぎる
先に別れ話をされていたせいで、このままだと自分が振られた形になってしまう。―と思ったのでしょうね。彼は。そこで、今回の計画で、リョウコさんの落ち度。―つまり、自分が彼女を振る大義名分を無理矢理作ろうとしたのです」
 「全く、なんて野郎だ。わたしがこの手で締め上げてやろうか!」
 ヒロコは日本酒を呷ると、お猪口をテーブルに強めに叩きつけた。
 その音に、茫然自失としていたリョウコさんが、ビクッと身体を震わす。「どうしよう。これから」リョウコさんは呟くように言った。
 「リョウコさん。ぼくの考え過ぎかも知れないですし、そんなに気にしないで下さい」
 「いえ」リョウコさんは、首を嫌々をするように横にふる。「十分に有り得る」
 何だか、妙に確信しているように、ぼくの眼には映った。付き合って半年だと聞いているが、そのぐらい付き合っていたら、一つ二つの心当たりはあるようだ。
 リョウコさんに取って、馬鹿彼氏と付き合うメリットはない。本人の意思もはっきりとしていることだし、別れるのがベストだろう。しかし、このままでは別れを受け入れてもらえないだけではなく、再び不義の捏造を計画される危険もある。どうするべきか。
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