夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「さあ?」ぼくは肩を竦(すく)める。「そればかりは、実際に会ってみないと判らないですよ」
 「うーん」
 ヒロコは腕を組み、眉根を寄せていたが、「まっ、それもそっか」と言って日本酒を呷った。
 「それはそうと、確かお子さんがいたと思うのですが―」
 「ああ。それなら大丈夫。呑む日は旦那に任せるって言ってたから」
 「そうですか。もう、大分大きくなられたんでしょうね」
 「そりゃそうだ。今年から小学校に通っているらしいし」
 「しょ、小学生、ですか」ぼくはだし巻き卵をぱくり。「そうですか。同年代の方に、もうそんな大きなお子さんが―」
 「だよね。わたしたちも、もうそんな歳なんだよね」
 ぼくとヒロコは、ほぼ同時に日本酒を呷ると、「ふう」ほぼ同時に嘆息した。
 「お子さんは、女の子でしたっけ」
 「そうだよ。しかも、相当なお老成(ませ)さんらしくて、今一番の関心事が、化粧品なんだって」
 「うーん。今時の小学生は、そういうものなんですかねー」
 「みたいだね」
 その後、大学時代のことやらを話しながら、二人で呑んだ。確かリョウコさんは、一年の冬前に、入学して以来付き合っていた彼氏と無事別れ、二年になってからは新しい彼氏を作った。
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