夜明けのコーヒーには 早すぎる
 差別されてきた人々が、同じく差別されてきた者を差別する。
 これ程の悲喜劇があろうか?
 実際問題として、既に存在するのがやりきれない。
 カミングアウト者による差別は、宗教徒による差別に近い。自分達が絶対に正しいと思っているから、間違っていると思う思考の者を非難出来るのだ。
 人にはそれぞれの事情がある。この事実だけでも、自分の意見を押し付けて差別することの愚かさが解るというものだ。
 尤(もっと)も、ぼくがこの意見に凝り固まることも、ぼく自信の差別に繋がるので、気を付けなければならないが。

 ぼくはそこまで思考を巡らせると、長い溜め息を吐いた。
 少し脱線してしまったようだ。
 カミングアウト者による差別は忌むべきものだが、カミングアウトは悪いことではない。
 大切なのは、カミングアウトを自然に出来る環境を整えることだ、な。
 ぼくは一応の結論に満足し、スクリュードライバーを呑み干す。
 「美味しい」
 ぼくの呟きは、部屋の静寂に飲まれていった。
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