夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「いやっ、そのっ、何と言うか―」クロはビールの残り半分を飲み干す。「どうかな?彼女。最近」
 「さあ?個人的な付き合いは、殆(ほとん)どありませんから」
 「そ、そうかい」
 「ええ」
 「会社での仕事はどうかな?彼女、何か悩んでない?」
 何聞いてんだおれは!
 言いたいことが言えず、クロはビールを追加する。
 こうなりゃ酒だ。酒がおれを後押ししてくれる筈。
 そんなクロを忖度(そんたく)するでもなく、「主任の方がご存知だと思いますが、シロさんは真面目に職務を全(まっと)うされていますよ」ユラはさらりと答える。
 そんなことわかっとるわ!
 と叫びそうになりつつも、自分がちゃんと言わないせいだと、クロは自制した。
 「あっ、いや待てよ―」ユラは梅酒のグラスを持つ手を止め、首を傾げる。「そういえば、最近シロさんが少し変だな」
 ユラの何気無い言葉に、やきもきしていたクロは素早く反応する。
 「どんな風に変なんだ?」
 クロは無意識に、少し身を乗り出していた。
 「いえ、どこがどうという訳では無いのですが、何だか妙にそわそわしています」
 「そうか」
 妙にそわそわか―
 クロは色々と思考を巡らせる。
 どういうことだろうか?
 そもそも、そわそわするってどんな時だ?
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