あたし、猫かぶってます。


 「…っ、」

 声が出ないくらい、何も喋れないくらい、何度も何度もキスをされる。


 奏多がなにを考えてあたしにキスしているのかは分からない。奏多を押し返そうとしても、力が強すぎて抵抗出来ないし。

 「かな…っ、やめ、」

 そんな中、やっと出た抵抗の言葉。


 別に奏多が嫌いなわけじゃないし、むしろ大好きで大切な存在。だからこそ、悲しそうに何度も何度もあたしにキスを落とす奏多の表情が切なくて。


 「やめない。」

 泣きそうな声で、そう言ってあたしに再びキスを落とした。


 優しいキスとは対称的に、すごく切なそうな表情。あたしが奏多にこんな顔、させているんだ。


 「結衣が、誰を好きでも、もうどうでもいい。」

 キスをしながら、独り言のように小さく呟く。


 「ーーーーどうせ、幼なじみには戻れないから。」

 奏多のその言葉がどういうことを意味しているのかをすぐに理解することができた。


 ーーードサッ



 そして、あたしの上に被さってくる奏多が、何をしようとしているのかも、あたしはすぐに理解できた。


 「結衣、ごめん。ーーー今から、きっと泣かせる。」

 そういう奏多が一番泣きそうな顔をしているってこと、気づいてないのかな。


 ねぇ、奏多は今、どんな気持ち?


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