あたし、猫かぶってます。


 「結衣、変わってるね。」

 否定的でも肯定的でも無い言葉。おそるおそる棗ちゃんを見る。


 「誰だって本音隠して何かしらのことをやり過ごしていると思うよ?」

 落ち着いた口調で、優しくあたしに話しかける棗ちゃん。なんか、ギュッて心臓が痛くなる。


 「でも、ずっと偽物じゃ疲れちゃうから、あたしらの前では本当の結衣で居なよ。」

 泣きそうなのを喉と目力で抑える。


 会って1日も経ってないのに、仲良くなれないって思っていたのに、見事にひっくり返された。

 
 「っつーわけだ、結衣。」

 ニヤリと笑った早瀬。早瀬は、あたしの気持ちに気付いていたのかもしれない。


 「早瀬、ありがとう。」

 自分勝手にあたしを引っ張ってきたんじゃなくて、棗ちゃんに会うことで、あたしに変わって欲しかったんだ。


 知奈ちゃん、棗ちゃん、早瀬、麻紘くん。これだけ味方が居たら、十分だよ。
 
 あたし、考えた。


 とりあえず、Wデートは麻紘くんに頑張ってもらおう。棗ちゃんも、知奈ちゃんも傷付かない方法が、一つだけある。

 知奈ちゃんが麻紘くんを好きになればいいんだ。

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