ここに在らず。


「あぁ。まぁ正しくはデザインしたっつーやつだけどな」

「あ、あの!私ちょっと疑問に思ってて…あの…だったら何故でしょう?」

「ん?」

「何故トウマさんは人が着て新しい色が生まれると分かったのに、なのにこれを私に着せようとは思ってくれなかったのでしょう?それなのに今、私が無断で着ても良いのでしょうか?」

「……」


ナツキさんは黙ってしまった。それはきっと、私の言葉が間違っていなかったのだと、そういうことだ。


「…そうだとしたら、やっぱり私はこれを着ない方が良い…ですよね…」


少しガッカリしながら私は、掛けられている服へと目を向けた。地味にも思えるシンプルなそれ。それをさらに地味な私が着た所で、きっとそこに何も生まれないような気もする。

それに私、洋服にあまり拘りも無いし、ほとんど適当に与えられたものを着てきたから知識も無いし…そりゃあただのTシャツとの違いくらいは分かるけど、それでもきっと私にはやっぱり……

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