スイート・リトル・ラバーズ
 おじいさんの言うように、私とシンは高校生活の2年とちょっとの間お付き合いをしていた。

 キスすらしたことのない関係だったけれど、私は正式にシンから「付き合ってほしい」と言われたから、ちゃんとした恋人同士で、月に何度かは一緒にデートっぽいこともしていた。

 私の彼氏になったシンはやんちゃな人間だった。

 ネットの用語で言うDQNなどではないにしても、それに近い存在で、誰かと掴み合いのケンカをするなど日常茶飯事のことだった。

 だから、シンに告白をされた時は心臓が飛び出るかというくらい驚いた。

 場所は学校の図書室で、時間帯は放課後だった。

 地味で友達がほとんどいない私からすれば本が唯一の友達で、時間を潰せる場所は図書室くらいしかなかったのだけれど、高校生活が始まって半年が経った9月のこと、家に帰ろうとその図書室から出たところで、

「あ、ねえ」

 と声を掛けられ、驚いた私が振り向くと、

「一緒に帰ろう」

 とシンに誘われた。

 どうしよう。

 学校でのシンの素行を知っていたから、私はそう思った。

 断ろうか思ったものの、そう言えばこの人も毎日放課後になると図書室に来るな、ということを思い出して、もしかしたら悪い人ではないのかもしれないと思い、こう言ってみることにした。

「学校を出るまでなら」

「お、マジで? やった。なら、行こう」

 そして一緒に昇降口まで降りて行ったのだけれど、意外なことにシンはずっと文学の話をしていた。

 黙ってそれを聞くだけだった私とは違い、シンは話すのが上手で、会話が途切れるということがなかった。

「俺、シンって言うんだ。そっちは?」

「私? 私は亜里沙」

「そっか、亜里沙さん、また来るよね?」

「うん、多分」

「分かった、じゃあまた明日ね」

 とそういう会話を交わし別れたのだけれど、私のことを「さん」付けして呼んだから、ぶっきら棒な人ではないのだと思った。
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