ROMANTICA~ロマンチカ~

***

 
病院を出ると、雪が降っていた。
 
ホワイト・クリスマス。
 
恋人たちを祝福してくれる夜。良い子の元に、サンタ・クロースがやって来る夜。
 
だけど、あたしは祝福されないし、あたしの元にはサンタ・クロースはやって来ない。
 

本当は、せめてもう少し涼輔さんのケガが良くなるまで、そばにいて看病するべきかもしれない。

だけど、涼輔さんのそばに、あたしはいられない。
 


あたしの名前は千住都季。
 
「鉄の女」と呼ばれた千住雅紀の娘。
 
あたしが傷つけたも同然の人を置いて出て行く冷酷な女。
 

あたしの遠戚は、あたしのママを殺した。
 


そして、このあたしの体にも、あの人殺したちと同じ血が流れている。

あの人たちとあたしのDNAは、いくつか同じ塩基配列を持っている。
 
あの人たちはとても利己的で、自分たちの利益のために、ママを殺した。
 
スキャンダルになるだろう。

ことは殺人事件で、被害者の立場とはいえ、氷室物産という大企業が絡んでいる。

マスコミが来るだろう。あたしが涼輔さんのそばにいると、涼輔さんまでボロボロにされる。
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