歪み

04


「っおい!橘さん?しっかりしろ!」

急に視界がぐらついたと思うと珍しく慌てた顔の
佐野 有があたしの肩を掴んでいた。
もしかしたら…
紅梨自身も苦しんでいたのかもしれない。
紅梨の言動に微かな矛盾がある。
戻りたくない訳じゃなかったのかもしれない。
自分が去ることがわかっていたのかな。

真実がどうであれ、あたしが逃げたのは
事実なんだから。


「ごめん、思い出したくなかったよな」

何も喋らないあたしに
佐野有がらしくもないことを言う。

「大丈夫だから、離して」

「…ごめん」

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