エデンの林檎


少し気持ちが落ち着いた私は先生から離れてよくよく外を見てみると


家の近くのコンビニにいることに気が付いた。


もう帰らないと…。


「先生…あの、もう大丈夫です。


肩も借りちゃってすみません。


いろいろありがとうございました。


もう、帰ります。」


「いや、オレは全然大丈夫だけど…


星野は本当に大丈夫か??


家まで送ろうと思ってたんだけど…。」


「本当に大丈夫です。


ご心配おかけしてすみません。


家まで送ってもらって理事長にバレたら大変なことになるのでここで大丈夫です。」


「そうか…。


じゃあ、何かあったらすぐにオレに言うんだぞ??


出来る限り星野のこと救ってやるつもりだから。」


「先生…じゃあ一つだけお願いがあるんですけど…


いいですか??」


「ん??何だ??」


「毎日放課後に先生のピアノを聞きにいってもいいですか??」


「え、あぁ、もちろんいいぞ。


じゃあ、放課後、音楽室でピアノを弾いて待ってるよ。」


「本当ですか!?!?」


「あぁ、本当だよ。」


「ありがとうございます。

約束ですよ??」


「わかったわかった。」


そう言うと先生は右手の小指を出してきた。


「ほら、指切り。」


何だか先生がかわいく見えて少し笑ってしまったけど、


「「ゆーびきーりげんまん、ウソついたら針千本のーます、指切った♪」」


ちゃんと二人で声を揃えて指切りをした。


「じゃあ、私帰ります。」


「おう、じゃあな。」


「さよなら。」


私は静かに車のドアを閉めて


小さく手を振って先生と別れて家路に着いた。


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