「……うん」とだけ短く返し、昴はその指輪をぎゅっと握りしめた。


忘れたい。
忘れたくない。


今までこの選択でずっと苦しんできた。
忘れれば楽になるかもしれない。
忘れなければ苦しむかもしれないが、夢でいつも彼女に会うことができる。

けれどいまは。


「結海は…もういない。死んだんだね」


誰に問うでもなく呟き、昴は小雨が降り注ぐ空を見上げた。

 
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