Doll


ぼくは山本病院の受付で自分の名前を告げると
白い制服を着たナースが「お待ちしておりました」と頭を下げた。

「ご案内致します。」

彼女はナースステーションにいる若干名のナースに軽く引き継ぎをし、ステーションから出てくる。

「地下なので、少し冷えるかもしれません。」
そう言いながらぼくの前を歩き出した。


「地下?」
「えぇ。当院、霊安室は地下に設けておりまして…」

・・・・・・れ、霊安室?!


何故だ?
何故そんなところにぼくは案内されるんだ??

いや、分かってる。理由なんてただ一つしかないのだから。

そして母親が言った『父さんが大変』の、言葉の意味を考えれば、“そこ”に誰が眠っているのかも安易に予想がつく。



だけど・・・そんな・・・



「こちらです。」


ナースが手のひらで指した先には、見るからにひんやりと冷えきった、重そうな扉があった。

この、先、に・・・






ぼくは、唾を飲み込むと、震える手でそっと、扉を開けた。


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