君の温もりを知る
第六章

交差する僕ら


何故かこんな時に限って、
明日の今朝の『おまじない』が
私をひどく安心させるのです。


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目を開けると、月明かりにだけ
照らされた薄汚いコンクリートの天井が
視界に入った。

気怠い体を叩き起こして、
状況を確認すべく周りを見渡せば
すぐそばに胡座をかいた宮野先輩と、
さっきまでの私みたいに
未だ冷たいコンクリートに横たわって
寝たままの高坂くんがいた。

理解できたのは、この狭い部屋の中に
私達三人が『閉じ込められてる』こと。


「おはよう、吉原」


「おはようございます。先輩、ここは…」


「そうだな…俺たちがあいつらに
ついて行ったのは覚えてるか?」


先輩がそう指すのは、言わずもがな
あの不良たちである。


「はい。そりゃもうはっきりと…」


応戦する先輩も、かっこよかったし。


「じゃあその後、ここの建物につく
手前ぐらいで意識を失わされたことは?」


「いや、覚えてないです…」


そんなことがあったとは。

それから先輩は、目の前にあるドアは
硬く鍵がかかっていることと、
壁の高い位置に一つだけある小窓も
頑張って覗いたらかなりの
高さがあったことを教えてくれた。

窓も換気扇も、人が通れそうな
大きさではなく、部屋には物もなかった。


「先輩、ごめんなさい…」


これだけは、言わなくちゃいけない。
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