唯一の涙
野球部

ーーキンッ



真っ白な白球が空高く打ち上がった。
ボールは綺麗な弧を描いて、人々の視線を集める。




「あっ、こんな所にいたっ‼もーーーーっ私がどれだけ校内探し回ったと思ってんのよ」




ボールの軌跡を辿っていると、背後に気配を感じた。



不機嫌さを隠そうともしない、トゲトゲしたオーラを向けてくる人は、私が知る限り、一人しかいない。



「紀衣……私、いつもここにいるじゃん」



「知らないわよ、そんなの。……さっきから何を見てるの?」



紀衣は窓の外に身を乗り出して、あちこちに視線を向けていく。



そして、またか…と大き過ぎる溜息を吐いた。



彼女は古川 紀衣【ふるかわ きい】。



親友というか、幼馴染みというか、腐れ縁というか。



保育園の時から飽きもせず、ずっと一緒にいる女の子。





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