唯一の涙

私がそう言うと、焦ったように慌て出した。


「小山くん、ありがとうね。この髪型、気に入った!」


最後にそう言って、私は看板を手に教室を出る。
教室を出る前に見た、小山くんの顔が薄く染まっていたのは、私だけの胸に閉まっておこう。


ただの自惚れだったとしても。
私が小山くんの気持ちに答えることは出来ないのだから。


「1ーC、縁日やってまーす!」


私は看板を掲げると、校内を歩き出した。


*******


午後になっても、私達のクラスは繁盛していた。
お陰で昼休みの時間潰れちゃったし……。


水野先輩と回りたかったんだけどな……。
後夜祭があるけど、少しでも先輩と一緒に居たいよ……。


「チョコバナナ、三本ちょーだい!」


手先が器用だからとチョコバナナ担当になった私。
いつまでもぐじぐじしててもしょうがないか!!仕事しなきゃ!!


「はい!ただい……ま……」


私は、目の前にいる三人を見て、空いた口が塞がらなかった。
何故なら……


「ヤッホ〜〜、浴衣姿も可愛いやん!!」


「馬子にも衣装ってやつ?」


「頑張ってるな、河原」


逢いたいと願っていた人(+α)が居たんだから。






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