唯一の涙

戸惑


「へぇ〜、良かったじゃん和歌‼やーーーーとっ、あんたにも春が来たのね‼」



自分ことのように喜んでくれるのは、昔からの友達……紀衣。



今日は水曜日。
NO部活ディーということで、野球部の練習が休みという貴重な時間だ。



野球は大好きだけど、私だって高校生だ。
野球以外にも、色々とやりたいことがある。



ショッピングに映画、美味しい物だって食べたいし、友達とだって遊びたい。



そんなわけで、今日は紀衣の家に遊びに来ているのでした。



「ありがと。……でも、何か実感無いんだよね」



先輩に告白されて、私も告白した。
先輩とは両思いだけど、それ=付き合うという方程式が出来ていいのだろうか。



あの日私達は、お互いを『好きだ』と言ったけど、『付き合おう』とは言わなかったし。
実際のとこ、どうなんだろう。



先輩と私って、どういう関係なのかな?



「何言ってんの?好きなら付き合うのが普通じゃん‼」




「そうなんだろうけど……」



自分でも、何がしたいのか分からない。



先輩ともいつもと変わらないし、特別何かが変わったわけでもない。



いつまでも答えが見えてこない、もどかしい感じ。
そうなると私は、面倒くさくてどうでもよくなる。



クッションを抱いて、私はコロンと横になった。



「……ずっと気になってたんだけどさ、紀衣ってば何やってんの?」





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