ブラッドサースティ・キラー
 病室の入り口に立ち、こちらを真っ直ぐに見つめている人物は、見覚えのない男性だった。

 見たところ、歳は僕より少し上といったところだろうか。

 顔立ちは整っていて、日本人らしい黒髪がよく似合っていると思う。

 白い縁の眼鏡をかけているところを見ると、目が悪いのだろうか……?


「あの……?」


 病室を間違えたのかもしれないと思った僕は、口に出してそれを知らせようとした――のだけれど。


「みっともない」

「え?」


 見知らぬ男性はずかずかとこっちに寄ってきて、ぐいっと顔を近付けてきた。

 って、あの、近すぎるんですが……!


「大丈夫か?」

「え?え?……あっ、頭は、なんとか大丈夫です……けれど」

「『けれど』?」

「あなたは、だれなんですか?病室、間違えていませんか……?」


 その刹那、見知らぬ男性は目を見開き、僕の発言に対して驚きを隠せないようだった。
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