チャット恋愛注意報!!(旧)


……そんなこんなで、あっという間に時間は過ぎていき。

元々解散の約束をしていた、5時になった。




「YUKI、俺が車で送ってやろうか?」

「俺とフジヤマは帰る方向が違うだろ?」

「まぁそうだけど、でも途中までは同じ方向じゃん?」

「あー……でも今日はいいよ。 座席、予約してあるし」

「そっか」




『クソメガネ』とか言ってたのに、フジヤマは優しく笑ってYUKIに手を振っている。

そんなフジヤマに、YUKIもまた微笑みながら帰っていった。


その後、電車の時間が迫っていたユージも歩き出す。

『またチャットで』と『メールする』との言葉を聞き、私は嬉しさのあまり、人目を気にすることなく大きく手を振り、改札を抜けていったユージに笑いかけた。




そして残されたのは、私とフジヤマ。

……あ。


何気に、二人きりになってしまった。




「えーっと……フジヤマは、ホテルに泊まるんだったよね」

「おう」




二人きりになったら、妙に緊張してきた。

さっきまで喋りっぱなしだったフジヤマも、今はなんだか静かだ。




「……やっぱり、疲れた?」

「まぁな。 朝6時に家出て、休憩を挟みながら来て、渋滞にハマって……結局9時間くらいは運転してたもんなぁ」

「あ、あの……なんか、ごめんね……?」




9時間もかけてここに来てくれた。
それはとても嬉しいのと同時に、申し訳なくも思う。

いや、申し訳ない気持ちの方が大きい。


自分で車を運転してるから、さすがにとんぼ返りとは行かなくて……ホテルに泊まる費用とかも、余計にかかってしまう。

なのに私たちが話したのは、たった2時間。

2時間のために、わざわざフジヤマは来てくれたんだ。

そのことを思い、胸が痛くなる。




「あの……今度は私がフジヤマのところに行くからっ」




と、思わず出た言葉に、フジヤマはふっと笑った。




「“次”があるんだな」

「……え?」

「また会うつもりがあるんだなーと思ってさ」

「あ……うん……」




自分で言ったのに、自分の言葉の意味をよくわかっていなかった。

『今度は私が』って、それって、『また会う』ってことだよね。

またフジヤマや、みんなと会う……。 私は、ほとんど無意識にそれを言っていた。


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