夏のカケラ
そう言って僕に顔を寄せた。


「黒田の事だが・・・」

「・・・はい」


監督は机の上のペンを回しながら呟く。

何を監督が言いたいかは、僕は分かっていた。

今日のクロは酷かった。

監督のアンダースローに掠りもしない。一年生の木山ですらバットに当てたのにも関わらずだ。

「・・・今は、三年生もいるから勢いで付いて来てはいる・・・だが、夏の大会が終わると・・・」

監督がペンの先をコンコンと机で鳴らす。

僕は黙っていた。

監督も言葉が続かない。

しばらく僕らは静かな職員室で黙り込んでいた。

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