お兄ちゃんと、秘密の恋。


───ガチャ

「あら、要だけ?柚希は?」


──お母さんの声が聞こえる。


けれど、布団が被さっているから、くぐもった声に聞こえるし、バレるんじゃないかっていう恐怖から、心臓が大きな音を立てて動いている。


「ああ、柚希なら、今日は友達の家に泊まるってさ」

「あら、そうだったの。お母さん、家に忘れ物取りに来ただけだから、すぐに仕事場に戻るわね」


「ああ、いってらっしゃい」

「後はよろしくねー」と言いながら、お母さんは部屋を出て行った。


そして数分も経たない間に玄関の扉が閉まった。


「柚希、もういいぞ」

「…ぷはっ……」

……こ、怖かった……


バレなくて良かった……

やっと心臓が元の動きに戻る。

「はぁ……」

思わず安堵のため息が零れる。









………そう思ったのもつかの間。



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