Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

マエリさんには湧き起こらない感情を姉には確かに感じている。

マエリさんに抱きつかれてもそよ、とも感情が揺れないのに、姉とのスキンシップとも言えないような接触に身体中が疼く。

同じ空間に居る姉の存在を否応なく意識する。

離れれば離れたで思考を支配するのは姉の事ばかり。



記憶を失った病室で初めて彼女を目にしてドクリと心臓が跳ねた。

一目惚れ、だったのだと思う。

その後直ぐに“姉”だと教えられて人知れずショックを受けた。

姉と聞かされ、それを証明するような姉弟の生活があっても僕に彼女が姉である記憶があるはずも無く、僕にとってはただ一目惚れした一人の女の子でしかないんだから。


「これは今の僕が変なんでしょうか?それとも以前の僕の感情が少なからず影響してたりするんですか?僕はこれからどうしたらいいんですか?」


例えば以前の僕は結構なシスコンで、その身内への情を記憶喪失と共に恋愛と錯覚しているだけなのではないか。

だとしたらもう少し身辺が落ち着けば何とかなる筈……と思いたい。

一思いに心情を吐き出して、隣の男に助けを請う。

須藤は必死の僕とは対称に相も変わらず冷静で。

不道徳且つ非常識な僕の感情を頭ごなしに否定したり嫌悪したりしないでくれたのは幸いだが、随分と人事のような……いや、確実に面白がっているように見える。

どうしてこんな人と友人になったのか…、とかつての自分の感性をちょっと疑う。



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