もう、明日がないなら…
 深呼吸を一つする。そして、左手にはまっている大きなダイヤを指から外すと、美妃のカバンに手を突っ込み、指輪ケースを取り出した。そして、ケースにしまったのだ。

「…え?」

 雅臣の行動に、美妃は驚きを隠せなかった。

「あれは、発信機付きの指輪ですよ。あなたは逐一彼に見張られています。でも、もう大丈夫。昨日、ケースに細工を施しておきました。ケースに電波を遮るシートを貼っておいたんです」

 彼は続けた。

「その時に、あなたのメールアドレスを確認させてもらいました。すいません。」

 そう言うと、雅臣は頭を下げた。

「さて次は旧春日邸跡に向かおうと思います」

「春日邸って…」

 美妃がそう口にすると、雅臣はうなずいた。

「あなたの自宅です。焼けてしまいましたが」

 辺りを警戒するように彼は立ち上がった。

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