もう、明日がないなら…
七 写真
「やっぱり信じられない、ですか?」

 隣に座る雅臣は、静かな口調でそう言った。

「だっておかしいじゃないですか。彼は確かにパリ行きのチケットをくれたのですよ…?」

「乗れなくするように仕向けるのは、簡単ですよ」

 雅臣にバッサリと疑問を斬り捨てられ、美妃は眉をひそめた。

「まぁ、あなたが貧血で入院してしまったのは、想定外だったでしょうが」

 ハイスピードで車は動いていた。昨日の雅臣の運転とは正反対で、佳美の運転は、ずいぶんと荒々しいものだった。そんな佳美の運転の仕方に慣れてしまっているのか、雅臣は遠目で窓の外を眺めていた。

「春日邸に行く前に、ちょっと寄り道します」

「え?」

 美妃は顔をあげ、窓を見つめたままの雅臣を見た。

「焼け跡から出てきたあなたの幼少期を収めたアルバムを引き取ったという、親戚のお宅に行きます」

 彼がそう告げると同時に、さらに車のスピードは上がった。美妃は、揺れる
車に体を預けるしかなかった。

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