瑠璃一味のお戯れな学園生活

入らずの山

まだ昼下がりだというのに、山中は薄暗かった。

天神温泉の旅館がある周辺は人の手によって開発も進み、どことなく温泉街のような雰囲気を醸し出している。

ところが僅かばかり足を踏み入れると、山は全く別の表情を見せ始めていた。

日中でも日の光を遮る鬱蒼とした木々、足元に絡みつくような背の低い草むら。

獣道だけが頼りの深い山林がそこにはあった。

とても天神温泉のある同じ山とは思えない。

下手をすれば、あっという間に迷って遭難してしまうのではないか。

未踏の地を旅慣れたシンや、人狼の血を引く咲花でさえ、そう思わずにはいられなかった。

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