悪魔なのは…
一章

一話


テレビを付ければ、様々なニュースがやっている。そして、どのニュース番組も同じことを延々と繰り返すのだ。

新しい事件が起きれば、パッタリとその後のことは知らせないくせに…。


「本当に最近物騒ねぇ」


そう溜め息を吐いた母親の台詞に、達輝はコーヒーから、顔を上げた。
そして、テレビに顔を向ければ、通り魔の報道を実況していた。


『また通り魔ですかー、最近非常に増えてますよねー』

『そうですねー…何の理由もなく、ただ単にそこに居合わせた人を殺してしまうわけですから、凶悪化してると言って間違いないでしょうね』

『警察で、何か取り締まる方法があればいいんですけどねー』


コメンテーターの言葉に、達輝は苦笑する。

予告をするわけでもない通り魔を未然に防ぐなんて、そんなの埋蔵金をピンポイントで掘り当てるのと同じくらい困難だ。
1人1人の生活を監視するシステムにするのならば、話は別だが…。


「犯人がちゃんと捕まって、しっかり裁かれればいいな」

「そうねー…可哀想に、まだ若い子もいたのに」


被害者の情報がテロップで流れ、中に高校生もいたことに、母親は眉をひそめた。
そんな母親を尻目に、達輝は朝食を終えると、スーツ姿のまま仏壇に手を合わせた。


「父さん、行ってきます」


そう写真に向かって挨拶すると、振り返って母親に向かって、同じ台詞を伝えた。


「いってらっしゃい」


毎朝繰り返す挨拶を終えると、達輝は家を出た。


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