だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版





「ごめん。私には、わかんないの」


「うん」


「好きってことが、わかんないの。『恋愛感情』って何かも」


「うん」


「友達の『好き』と、何が違うのかな?」


「うん」


「湊なら、知ってるのかな」




そう言った。


それを聞いた石田君は、諦めたように笑った。

そんな残酷なことを言わないで、と訴えるような表情で私を見つめる石田君。


石田君を真っ直ぐ見据えると、小さく息を吐いてその目線に合わせてくれた。




「わかった。じゃあ、これからもクラスメイトとして友達になろう」




にっこり笑って差し出された右手。

私も右手を差し出して、二人で握手をした。



そして、蓋を開けていないままの汗だくのアクエリアスを持って彼は走って行ってしまった。

私はその後ろ姿を、ただただ見送っていた。




彼があんなに大人だったのは、去年の夏にお母さんを亡くしたからだと後から聞いた。

その時彼のお父さんは、『大切な人にはきちんと気持ちを伝えなさい』と言ったのだそうだ。



大切な人が突然いなくなることがある、と。

身を持って知っているからこそ、あんな風に大人びた目をしていたのかもしれない。



同じような境遇の彼の気持ちを理解するのは、私にとって簡単なことだった。



本当に大切な想いだったのだと知った。




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