だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版





大きなハプニングもなく、グランドフィナーレを迎えたステージ上には、クライアントの会長と社長が並んで登場した。

会長はきりっとした女性で、きっと五十代後半くらいだろうか。

身のこなしや立ち振る舞いに気品があり、美の本質を知っているような人。


隣をエスコートする背の高い男性は、とても若く凛々しかった。

確か資料によると四十代だった気がするけれど、見た目は櫻井さんとほとんど変わらない。

自信に溢れたその表情は野心とは無縁の穏やかな顔をしていて、それが少し怖いな、という印象だ。



二人のスピーチで、今回のブライダルフェアは大盛況のうちに幕を閉じた。




舞台袖では、パートナースタッフの人とモデル、そしてうちの営業達がごちゃまでになって抱き合っている。

中には泣いている人もいて、大成功に終わったことのイベントに感極まっているようだった。


こんなグランドフィナーレを迎えられるなんて思っていなかったので、つられて涙がこみ上げてきた。

意識なく溢れた涙は、この仕事の素晴らしさを再認識させてくれた。



こんな感動を、みんなと作っていけたら。

うちの会社のことを、こうして沢山の人に知ってもらえたら。

心に残ったこのイベントが、誰かを幸せにするためのものになリますように。

そんなことを、想った。


広告代理店という多忙な業務の中で、私に出来ることを見つけていきたいと。

心の底から、想った。




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