だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版





第二運営本部には、今年の企画担当会社のチーフリーダーとうちのチームメンバーが控えている。

部長と水鳥さんだけは、運営本部でクライアントと一緒に運営を手伝っている。


今年はあくまで補助的な役割を任されているが、運営本部に入っているからには指示を出すこともある。

企画書を片手にタイムテーブルを確認し的確な判断をしている櫻井さんは、やはり一目置かれる存在らしい。



無線に飛び込んでくる慌てた声に対応しているのは先方のチーフリーダーだ。

しかし、いざ第二本部に入ると指示を出しながらチーフリーダーと議論をしている櫻井さんが目に入った。




「資料持ってきました!舞台の方は順調に進んでいます。ライトダウンしたら伝達に向かいます」




声をかけると櫻井さんが振り向いた。

重たい資料を机に置こうと部屋の中に入ると、私の方に向かって急いで歩いてきた。




「悪かったな、こんな物持たせて。森川たちを呼べばよかったのに」




ひょいと資料を抱えられて、私の腕はすぐに軽くなった。

目の前で申し訳なさそうにしている櫻井さんは、両耳に無線をつけている。



自分だって忙しいのだから、そんなに気をつかってくれなくていいのに。




部屋の中で打ち合わせをしていた森川たちが、一斉に立ち上がる。

多分もうすぐライトダウンになるので、舞台袖でのスタンバイをするのだろう。

ネクタイをしっかりと締め直し、三人は営業の顔になる。




男の人の仕事をしている顔つきは、本当に素敵だな、とぼんやり思う。




< 4 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop