砂漠の夜の幻想奇談

(息子達を犠牲にしても、たった一人の娘がほしい…)


王子を失う重大さよりも母親としての欲望が勝った。


次こそはと期待をしても男児ばかり。

あの出産の後の落胆を何度味わったことだろう。


「…息子達を捧げます。ですから、どうか娘を…娘を授けて下さい」

弱々しい声なれど、その思いは強かった。

ニヤリと笑む女の魔神。


「よかろう!契約成立だ。我の名はマイムーナ。お前の腹から娘が生まれたその時、十二人の息子達をいただくぞ」


こうして王妃様は魔神と契約を交わした。

そして、事態はまさしく魔神マイムーナの言葉通りとなったのである。




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