砂漠の夜の幻想奇談

「急げ!」

言われるまでもない。

慌てて檻の外へ出るサフィーア。

しかし――。


――ガオオォオ!!!!


逃がさないと言うようにバキータがサフィーアの背中に飛び掛かってきた。


(いやぁああ!!!!)


「サフィーア!!!!!」


とっさにサフィーアの腕を引く。

シャールカーンはサフィーアを引き寄せながら自分が前に出た。


獣の爪が、彼の肌に食い込む。


「っ!!!!」


痛みに悲鳴も上がらない。

シャールカーンは胸部を鋭い爪で切り裂かれた。


(シャールッ!!!!!)


目の前で膝をつくシャールカーンに息を呑む。

けれど、それも一瞬のこと。

サフィーアは我に返ると慌てて檻の扉を閉め、カギをかけた。

バキータは唸りながら鉄格子を引っ掻き、彼らを見つめている。


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