砂漠の夜の幻想奇談

すると、試合終了の角笛が鳴った。

太鼓やラッパのBGMが止み、観衆の叫びも大人しくなる。

それから徐に立ち上がった審判に、皆が注目した。


カムルトスは厳しい眼差しでシャールカーンを見下ろす。

極度の緊張にシャールカーンの心臓はうるさく脈打った。

そして――。


「天晴れ!!シャールカーン殿!!」


掛けられた大声は勝者を称えるものだった。

「窮地に立たされてなお前進し、知恵を絞り勝利を掴み取るとは真に見事!」

観衆がいる手前こんなふうに言っているが、カムルトスが内心伝えたい言葉は「卑劣な妨害にも屈することなく頭(兜)を使ってよく頑張ったな、偉いぞ」というものである。

審判には全てお見通しであった。

厳めしい顔に柔らかい微笑を浮かべてから、カムルトスは宣言した。


「団体戦はシャールカーン殿率いる軍の勝利である!!!!」


瞬間、場内に割れんばかりの歓声が上がった。

勝利を祝うためにドラムが再び叩かれ、楽隊が演奏を始める。


(勝った……シャールが勝ったわ!!)


サフィーアの目からは喜びの涙が溢れた。


「良かった…王子……」

責任を感じていたバルマキーも安堵する。


< 520 / 979 >

この作品をシェア

pagetop