砂漠の夜の幻想奇談

『さてと、近道するならこっちだな』

ガサガサと中庭の草花を掻き分けて道無き道を行く。

すると、顔を出した先に金髪の女性と子供を発見した。

『シャール、こちらへおいでなさい。見て、薔薇の花がとても綺麗』

『ばら…?』

『ああっ、刺があるから気をつけて!』


危険な刺で指を傷つけないように子供を気遣う母親。

一瞬、ダウールマカーンの胸がズキンと痛む。


(ムチ好きのあの女とはオオチガイ)


優しい眼差しで子供を見つめる金髪美女。

あんな女性もいるんだと初めて知った。


『あら?貴方は第一王子…?』

不意に女性と目が合った。

『初めまして。アブリザといいます』

笑顔で近寄ってくる彼女になぜだか逃げ腰になる。

『えと…あの…』

どう対応しようか迷っていると、アブリザが会話を進めた。

『この子はシャールカーン。貴方の弟になるわ』

『弟…?』


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