砂漠の夜の幻想奇談

あからさまに「ゲッ」という表情を顔に浮かべたシャールカーン。


そう、ここは後宮。

彼女達は父オマル王の側室だった女性達だ。

シャールカーンは前王崩御と同時に側室達を解放したのだが、彼女達の多くは後宮に留まった。

どうやら皆、若い王の寵愛を受けたいと願っているらしい。

今、シャールカーンの妃は正妃サフィーアただ一人。

上手くシャールカーンを陥落させれば自分達が第二、第三の正妃になれるかもしれないのだ。

彼女達にとって、今が勝負どころである。

しかし。


「すまないが皆、出て行ってくれ」

シャールカーンはつれない。

「そのようなこと、おっしゃらないで下さいませ。寂しゅうございます」

「私達もご正妃様と同じくらい王様に癒しを差し上げられますわ」

「王様、是非…!」


だんだん鬱陶しくなってきたシャールカーン。

集まった彼女達を冷めた目で見つめ、こう言った。

「俺と妃の時間を邪魔するなら後宮から追い出すよ」


< 610 / 979 >

この作品をシェア

pagetop