砂漠の夜の幻想奇談

「む、無理!やっぱり無理よ!いくら美人でカッコ良くても、会ってすぐ結婚だの愛だの語る人はお断りだわ!」

唇が解放された瞬間、早口でまくし立てるサフィーア。

彼女は荒い呼吸を整える間も惜しいといった様子で寝台から起き上がった。

「…君は一目惚れという言葉を知らないのか?」

再び窓辺に近寄る彼女の背中に軽い皮肉を投げかける。

「知っているけど信じてないわ。求婚はお互いよく知り合ってからするものよ」

「……クリスチャンはお固いな」

そしてシャールカーンも立ち上がった。

サフィーアの後ろに寄り添い、問い掛ける。

「何を見ている?」

「外よ。どうやって帰ろうか考えてるの」

「帰る…?」

「そうよ。早く帰らなきゃ。兄上達だけでなく私まで行方知れずになったら、母上が卒倒しちゃうわ」


< 65 / 979 >

この作品をシェア

pagetop