猫と生きる




俺は掃除機のスイッチを入れた。


小さな部屋だと掃除がすぐに済む。


ざっと掃除機をかけて、押し入れを開ける。


「終わったから出てきていいぞー。」


押し入れからのそりと顔を出すのぶ代さん。


「ほんとかー?」


「ほんと。」


のぶ代さんが出てきたところで俺は再び掃除機のスイッチを入れた。


「ぎゃーーー!!」


慌てて押し入れに潜り込むのぶ代さん。


「ばか!アキハのばか!!」


押し入れの奥からのぶ代さんの声が聞こえる。


「ごめんごめん。」


俺は押し入れに掃除機をしまった。


「ほら、掃除機しまったよ。出ておいでのぶ代さん。」


「ばか、アキハばかー!」


文句を言いながら押し入れからのぶ代さんが出てきた。


俺は机の上に置いてあるデジタル時計を見る。


「そろそろみんな来る頃だな。」


のぶ代さんは不機嫌そうに再び窓際で横になった。






ピンポーンというインターホンの音を聞き、俺は玄関の扉を開ける。


「こんにちは。」


制服姿の露木さんだった。


真っ白なマフラーを巻いている。


「こんにちは。あがって。」


「うん、お邪魔します。」


露木さんは丁寧に靴をそろえ、家にあがった。


「学校の卒業式が終わってそのまま来たの。それでね、これ…」


露木さんはスーパーの袋を俺に差し出す。


「ありがとう。」


俺はスーパーの袋を受け取る。


何やら袋がもぞもぞと動いている気がするが…


恐る恐る袋を開ける。








「…タコ?」


袋の中には生きたタコが蠢いていた。


「あの、私…たこ焼きパーティーとか初めてで…その…おかしかった?」


「いや、大丈夫。ありがとう。」


俺はタコが逃げ出さないように袋の口を縛り、そのまま冷蔵庫に放り込んだ。










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