捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

「これ、美味しいですね」


そう言って、三浦さんはアボカドとクリームチーズの生ハム巻きを綺麗な箸遣いで掴み、ぱくりと口に運ぶ。


「あ、私もそれ、好きです。美味しいですよね」


三浦さんの笑顔につられるように私も笑う。

……この場所に来てから、初めて自然に笑った瞬間だったと思う。


……それからは、食べるのが好きだということが共通点だと気付いた私たちは、運ばれてくる料理にあーだこーだ言いながら時間を過ごした。

食べ物の好みも似ているようで、お互いにお気に入りのお店を教えあったりもして。

その代わり……全く自分たちの話はしなかった。

 
< 13 / 254 >

この作品をシェア

pagetop