捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

「……じゃあ、デートは楽しいところに連れて行ってくださいね?」

「!はい!もちろんです!横山さんも楽しませることができるように頑張ります。……あ、そうだ。もうひとつ提案してもいいですか?」

「え?」

「近いうちに苗字も変わってしまうってことですし、横山さんのことを“琴音さん”と呼んでもいいですか?」

「!!」


いきなり名前で呼ばれて、ドキッとした上に変な気分になってしまう。

でも、言うこともわかるしと三浦さんの提案を私は受け入れる。


「あっ、そっ、そうですねっ!ど、どうぞご自由に!」

「じゃあ、俺のことも名前で呼んでください。こういうところはちゃんとしておきましょう」

「……はぁ。えっと……そ、惣介さん……で大丈夫ですか?」


窺うように聞くと。

三浦さん……もとい、惣介さんは少し照れたようにはにかんだ。


「さん付けされたことないんで、ちょっとむず痒い感じしますね」

「あ、ダメですか?」

「いえ。新鮮でいいと思います。気に入りました。“惣介さん”。」

「ふふっ。私も“琴音さん”、気に入りました。じゃあ……これからよろしくお願いします。惣介さん」

「はい。よろしくお願いします。琴音さん」


私と惣介さんは心地のいい風が吹き渡るガーデンのベンチで、一緒に未来に進んでいく挨拶を交わした。



これが、惣介さんと過ごす人生の始まりの日。

 
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