水のない水槽

滲む花火

「オマエら、どこまで流されてんだよー」


電車を降りた途端、水落先輩の雷が落ちた。


「てかオマエらこそ、公衆の面前でイチャついてたんじゃねーの(笑)??」


そう突っ込む先輩は、もうすっかりいつもの調子を取り戻していて。


今まで知らなかった、先輩の裏の顔から、立ち直れていない自分が恥ずかしくなった。


「ねぇねぇ、先輩とちょっとは話せた?」


ニコニコしながら尋ねてくるまどかにも、なんだか申し訳なくって。


「う、うん…」


なんて曖昧な言葉でお茶を濁す。


「とりま、席の確保が優先だなー」

「この時間だと、橋の辺りなら平気じゃね??」


さすがに幼い頃から来ている地元の花火大会なだけあって、先輩たちはテキパキと行動を起こし始める。


「まどかぁ~、オマエら、飲み物とか先、買っといてくんない?」

「了解♪ 橋んトコ行ったら電話するね!!」


当然、わたしも買い出し組。


――今のうちに、気持ち切り替えなくちゃ。


ふぅっと大きな深呼吸をひとつ。


パタパタと走るまどかの後を追いかけた。
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