望む光へ歩け彼方へ
出会いと失望

受験勉強をがんばったか?と聞かれて、がんばったと答えるのは少し恥ずかしく思う。

そんな第一志望の大学に合格できなかった俺も浪人するような余裕はなく、辛うじて受かった私立の滑り止めの大学に入った。

そんなことをくよくよ悩んでいたが、1人暮らしの準備を始めたり、また海の近くに住むことになんてなったもんだから
段々楽しくなり、大学へ入学し、あっというまに1ヶ月が経った。

「おい、尊(たける)。なにぼーっとしてんだよ。手伝えよ。」

「あ、文彦か…。わりい」

俺の眼前にいきなり、買い物袋を持った濃い顔の男が出現し、少し動揺した。坂下 文彦。俺と同じく美術サークルに所属する、あまり多くない男子の一人である。

「体調悪いのか?男手は少ないが、無理はすんなよ!」

「すまん。大丈夫だ」

大学入学から1ヶ月経った今日は合宿。
合宿があるまでにもいろいろあったのだが、それは割愛。

奈々(なな)と雛乃(ひなの)が美術サークルを立ち上げ、ムードメーカーの文彦がサークルで合宿を企画し、と。
忙しいなかで決行された合宿。

ただでさえ人数ギリギリで活動する我らのサークルには当然欠席者もいて、少人数旅行のようになってしまっていた。

「あああ。なんでこんなに買い出しの荷物多いんだよおおお」

買い物袋をうけとると、俺はその量にしかめ面を隠そうとしなかった。

「文句言うなよ尊。雛乃ちゃんのコテージ借りられなかったら、こんなに食べられないんだぞ?」

文彦の言う通りではある。合宿を決するにあたってもちろん問題はいくつかあった。その中で最も多かった問題のひとつに、費用の問題があった。


ぽちゃん

「ん?今なんか聞こえたか?」

俺は何かが落ちたような気がして、あたりを見回した。

「なんも聞こえてないよ?疲れてるんか?おっ、やーっとコテージが見えてきたぜうぇーい」

ゴールデンウィークにコテージを貸し切り、しかも海岸さえも私有地のようである雛乃という少女の家柄に、疑問を持たないでもないのだが、148cmのその少女に

「うるさいことを言うのなら貸さん」

と、一蹴されてしまったので深く尋ねることはできなかった。ううむ気になる。

とにかく、やっとコテージに到着した俺と文彦は、食材を持って中へ入っていく。

「お、ホコリクサくない!?」

コテージに上がるや否や大きな声を発する文彦。顔立ちは整い、168cmの低身長ながらアイドルのような雰囲気を出すそいつは、学科の男女問わず人気のやつである。あまり俺は褒めてやらないが。

「部屋は綺麗にしたから、もうあんたの方が汚いくらいね」

そう言い放ったのが煌塚 雛乃(こうづか ひなの)。文彦といい雛乃といい、年齢詐称してるんじゃないかってほどの幼い顔立ちをしている。

雛乃は、黒のドレスのような服にロングの髪を横から流しているのが、コスプレではなく本物のお嬢様として成立しているからすごい。

「雛乃ちゃん言い過ぎだよ…」

小さな声で呟いたのが、市ヶ谷 奈々(いちがや なな) 158cmの平均的な身長。絵や書道が得意な、生粋の芸術肌でショートの髪が似合う女の子。

「よし集まったかお前ら」

仁王立ちしていたのは、身長172cmこのサークル唯一の二年生華田部 美冬(はなたべ みふゆ)大学の執行部にして酒癖の悪い(※20歳です。お酒は20歳になってから)人で、悪い方で有名人である。

これが今回の合宿メンバーである。
あとメンバーは女の子が2人いるが今日は来ていない。

「集まったもなにも5人しか
「宮部うるさい!」

決して大きな声ではなかったが、美冬さんの声は俺の声を遮るには十分であった。

「す、すみません」

俺はとりあえず謝り、場を流した。
美冬さんは突然優しくなったり真面目になったり、破天荒過ぎて予測できない。1ヶ月たらずの付き合いで美冬さんを流すテクニックを身に付けたのはなかなかだと思う。

「じゃあ、まず絵を描くか」

美冬さんはあっけらかんと言った
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