望む光へ歩け彼方へ
・・・
「ジュッと音を立てて肉の香ばしい香りが辺りを包んだ。泡一杯のジョッキを傾けながら私は」

「すみません。すみませんってば」
絵を描いていなかった俺たちは、美冬さんに二つのことを頼まれた。
そのうちの一つがこれ。BBQの火おこしである。俺は今までBBQに参加してこなかったのだが、それ以上に文彦も参加してこなかったようで、炭からちっとも火力を得られずにいた。

「や、やっと点いた…」

俺は安堵と共にうちわを扇いだ。

「た、尊めー」

俺の隣で未だに火をおこせずにいる文彦は放っておいて、俺は火の具合を確かめ始めた。広く火が点いた炭からは、夏場の石のように強力な熱を感じる。

「ようやくね…」

疲労が顔に滲む雛乃には、待望の点火にもどこか覇気がない。

「私替わるよー」

奈々の申し出は

「奈々ちゃんはこっちに座ってなさい」

笑顔の美冬さんに却下された。

「ありがとね、でもこれくらいはできないと。あ、そろそろ焼けると思うよ」
俺は笑ってさらに続けた。

「わーい」

女性陣が肉や野菜を持って、鉄板の周りに寄ってきた。
文彦…ごめん。

「ぢ、ぢくしょう」

火がつかない文彦を尻目に、四人は鉄板を囲み、次から次へと焼いていく。

「雛乃ちゃん、はい、あーん」

奈々から差し出された箸を見て、雛乃は横を向いた

「じ、自分で食べられるわよ」

背が低いためか、こういう扱いを受けやすい立場なのかもしれない。俺は少し同情した。





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