ヒールの折れたシンデレラ
そっと唇が離れて目を閉じたままの宗治が「はぁー」と大きく息を吐く。

ゆっくりと開いた宗治の瞳に千鶴は自分の姿を確認した。

「シャワー先に浴びてくる。どうあがいても今日は帰すつもりないから覚悟して」

そう言い残して、バスルームであろう方向へ歩いて行った。

千鶴はふらふらとソファに腰掛ける。

(帰すつもりないって……そういうことだよね)

両手で顔を押さえると、想像以上に熱を持っていることに驚く。

これから起こるであろうことに思考を奪われていると耳もとで「どーぞ」といきなり声をかけられて「ひっ!」という色気のかけらのない声が出てしまう。

「もう!いきなり声かけないでくだ……」

振り向いてシャワーあがりの宗治をみて、千鶴は言葉が続かなかった。

「ん?早くシャワーしておいで」

髪をバスタオルでガシガシと拭きながら千鶴に声をかけている宗治は腰にバスタオル一枚。

「あ、わわ……いっ行ってきます」

顔を真っ赤にして、飛び上がるように立ち上がり千鶴は急いでバスルームへ向かった。

盛大な宗治の笑い声に見送られて。

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