ヒールの折れたシンデレラ

(3)割れたガラスの靴

「遠山さん出張同行しているんですか?」

月曜に出社して園美が出社していないことを尋ねると艶香が答えてくれる。

「なんか無理矢理日下専務に頼み込んだらしいよ」

日課の枝毛チェックをしながら、チラリと千鶴を見て「ピーンチ」と一言言っておかしそうに笑う。

「べ、別に日下専務に同行してるんですよね?」

「とかなんとか言って、顔に動揺がでまくってるよ」

眉間を指してクスクス笑う艶香を軽く睨む。

「でも今回は本当にゴリ押しで同行したみたい」

相変わらず枝毛を探している艶香だったが「気をつけなさいよ」と一言千鶴に声をかけてきた。

日曜に見送りに行きたいという千鶴を宗治が「さみしくなるから」という理由からマンションで“いってらっしゃい”をした。

その時に園美の話は出ていなかった。

園美の宗治に対する本気度合が伺い知れて千鶴は心がチクリと痛む。

配属後は宗治をできるだけ避けて行動していた。おそらく今も園美は千鶴の気持ちの変化に気が付いていないのだろう。

千鶴も当初は宗治にここまでひかれて、そして思いが通じるなどとは思ってもいなかったのだから。

嫌な予感がして気持ちがざわめく。
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