ヒールの折れたシンデレラ
「あ、そ……」

千鶴の答えに明らかに落胆したような和子だったが「まぁすぐにはどうにもならないでしょうね」とため息をついた。

「今日もあの絵見ていく?」

そういうとドアを指さす。

「はいっ!」

千鶴はゆっくりとドアをあけて一歩中に踏み出す。

しっかりと目に焼き付けてゆっくりと瞼を閉じる。

瞼の裏にその絵が焼き付けられていることを確認して、「ありがとうございました」と和子に声をかけた。

会長室を出るときに「引き続き頑張ってね」と声をかけられる。

正直自信などまったくない。けれどあの絵のためにやらなければいけない。

ぐっとこぶしを握って気合いを入れた千鶴はエレベーターへと向かった。
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